1)為替変動の大きさが2倍に増加
2)金利は1/2~1/4に低下
為替のレートがよく動くようになった理由は、為替マーケットのマネーボリュームが著しく低下していることのようです。つまり流動性の低下ですね。これまでヘッジファンドなどの投機的なポジションの占める率が大きかったわけですが、今はヘッジファンドも資金不足。信用不安で銀行も融資しなくなりました。結果、マーケットに及ぼす実需の影響が相対的には大きくなってきていることになります。値が飛びやすいということと、季節要因でレートが動きやすいという傾向が今後も続くでしょう。
金利引き下げについては、景気回復を狙ったもので2008年最初に米ドルの利下げがありました。米国だけが景気が悪いかのようにも言われていましたが、実体としては世界的な景気悪化であったため、その後欧州、オセアニアへも続きました。景気回復の兆しが出てこないと、利上げという話にはならないので、上記二つの環境は、すぐには変わらないと考えた方がよさそうです。
為替の変動が2倍というと大したことないように思うかもしれませんが、結構大きなインパクトです。実際に各通貨ペアでこのことを数値でも確認してみます。 比較するのは2004年~2008年です。
1)為替変動幅の大きさが2倍に増加
年率HV | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 |
AUD/CHF | 10.24 | 7.55 | 7.51 | 11.95 | 26.11 |
AUD/JPY | 10.49 | 8.07 | 8.11 | 16.82 | 36.13 |
AUD/USD | 14.15 | 9.34 | 7.97 | 11.37 | 26.66 |
CAD/JPY | 10.26 | 9.33 | 9.31 | 13.80 | 25.91 |
CHF/JPY | 10.63 | 7.58 | 6.98 | 8.11 | 16.43 |
EUR/CHF | 3.46 | 2.79 | 2.77 | 3.67 | 8.93 |
EUR/GBP | 6.40 | 5.32 | 4.18 | 5.15 | 11.33 |
EUR/JPY | 9.72 | 7.43 | 6.53 | 9.90 | 20.38 |
EUR/USD | 10.45 | 8.71 | 7.27 | 5.81 | 14.16 |
GBP/CHF | 7.52 | 5.50 | 4.43 | 6.72 | 16.43 |
GBP/JPY | 9.90 | 7.20 | 6.91 | 11.15 | 23.66 |
GBP/USD | 10.13 | 8.31 | 7.58 | 6.53 | 14.76 |
HKD/JPY | 9.74 | 8.80 | 7.86 | 8.72 | 14.63 |
SGD/JPY | 7.26 | 6.30 | 6.14 | 9.69 | 17.15 |
USD/CAD | 9.04 | 7.99 | 6.87 | 8.70 | 16.54 |
USD/CHF | 12.02 | 9.68 | 8.52 | 6.71 | 15.02 |
USD/JPY | 9.89 | 8.92 | 7.95 | 8.74 | 14.77 |
ZAR/JPY | 18.53 | 13.00 | 14.47 | 18.55 | 36.09 |
平均 | 9.99 | 7.88 | 7.30 | 9.56 | 19.73 |
これは、主要な通貨ペアのヒストリカル・ボラティリティ(年率)です。平均値が示すよう2008年は約20%と際立っています。それまでの4年間は10%程度だったわけですから、ボラティリティが2倍。
ヒストリカル・ボラティリティは、前日終値と当日終値の変化率で計算します。その標準偏差を計算し年率換算したものです。この値が2倍になったということは、一日の為替変動の割合が2倍になったというわけですね。いまのドル円は、かつてのランド円とおなじくらいによく動くというイメージです。
ボラティリティといってもピンとこないかもしれないので、年間の為替変動の上下幅から計算した値にしてみます。
変動幅係数 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 |
AUD/CHF | 3.94 | 2.66 | 1.79 | 3.22 | 9.51 |
AUD/JPY | 2.69 | 3.07 | 2.70 | 4.46 | 16.57 |
AUD/USD | 4.21 | 2.09 | 2.31 | 4.87 | 13.17 |
CAD/JPY | 3.22 | 6.68 | 1.78 | 5.64 | 11.65 |
CHF/JPY | 2.50 | 1.89 | 2.34 | 1.53 | 8.35 |
EUR/CHF | 1.19 | 0.43 | 0.99 | 1.15 | 2.72 |
EUR/GBP | 1.94 | 1.23 | 1.12 | 2.49 | 5.46 |
EUR/JPY | 2.07 | 1.86 | 3.14 | 2.45 | 10.44 |
EUR/USD | 3.44 | 4.06 | 3.02 | 3.87 | 6.96 |
GBP/CHF | 2.25 | 1.11 | 1.89 | 2.11 | 6.68 |
GBP/JPY | 1.82 | 2.00 | 4.01 | 2.78 | 13.46 |
GBP/USD | 2.29 | 3.45 | 3.76 | 1.97 | 9.73 |
HKD/JPY | 2.40 | 4.72 | 1.72 | 3.00 | 4.96 |
SGD/JPY | 1.53 | 3.43 | 2.39 | 1.94 | 7.51 |
USD/CAD | 4.19 | 2.54 | 1.67 | 6.84 | 8.41 |
USD/CHF | 3.60 | 4.07 | 2.62 | 3.11 | 5.42 |
USD/JPY | 2.51 | 4.51 | 1.79 | 3.14 | 5.19 |
ZAR/JPY | 5.00 | 3.82 | 8.02 | 3.30 | 15.36 |
平均 | 2.82 | 2.98 | 2.61 | 3.21 | 8.97 |
これは、1年間の高値と安値の変動幅と、レートの平均値から変動の大きさを指数化したものです。変動幅係数という用語はありません(たぶん)。あまり一般的な計算方法ではありませんが、ボラティリティよりも一定期間の変動幅から計算しているので、直感的に分かりやすいと個人的には思っています。
これで見ると、やはり同じように2008年は2倍~3倍くらいの値幅があったといえます。大暴落となった豪ドル円やポンド円などは、4倍も違っているという計算になりますね。HV(ヒストリカル・ボラティリティ)ではあまり表に出てこない特徴が分かります。
2)金利は約1/2~1/4に低下
金利差についても比較表を作ろうと思ったのですがすべてのデータとなると集計作業が大変だったので、機会があれば載せることとしまして、結論だけ書きますと、主要通貨は大きく金利が低下して1/2~1/4程度へ。ランド円などの高金利通貨は、大きく変わっていないものもあります。といっても、その分レート変動は大きく、スワップをリターンとした時のリスク(為替変動)は、悪化していますが。
以上のように、為替変動が2倍になって、スワップ金利は甘く見ても1/2ということですから、2007年以前と単純比較しても1/4程度、悪ければ1/10程度の投資効率しかないということになります(為替変動のリターンではなく、金利のリターン)。もちろん通貨ペアによってばらつきが大きいですが、数値上では平均的にこのようになっています。
そのような理由から2008年春先から投資戦略を変えてきました。こういった環境でもスワップ、金利狙いという方も相変わらずいると思います。入るタイミングさえ間違えなければ、この先楽しみなポジションも作れると思いますし、一つの戦略だと思います。そうだとしても、これまでと全く違うマーケットとの認識でいたほうがよいのではないでしょうか。
いまのようなマーケットの性質は、元の水準に戻るかというと、これもわかりません。少なくとも今年に入ってからも継続しています。マーケットのテーマや材料がころころと入れ替わる今の相場はしばらく続くのでしょう。そのような状況で、先のことを予想してもあまり意味がないのでは?と個人的には考えています。
では、為替変動が大きくなったということは、ノイズのような乱雑な動きが増えてしまったので、今はFXなどの投資は難しいのかというと、必ずしもそうではないと考えています。ある時間枠でみれば上昇か下降が続くようなことが多くなっている、つまりトレンドが出やすくなっています。トレンドにうまく乗っていけばスイングトレードがとても効率よく稼げるようになっています。
これまでチャートやレートの変動を見てきた実感として、また実際にスイングでとりやすくなっていることからそう考えているのであって、具体的に検証したわけではありません(機会があれば検証もしてみます)。マーケットの性質をよくみて、自分の投資手法をどのように相場に合わせていくかを考えるべきだと思います。個人的には去年から株価指数先物の売買などもスタートしていますが、これもなかなか面白いです。
スイング向きのFX会社も変わりつつあります。システム刷新で今後楽しみなFX会社の一つFX Online Japan。
スイングについては、ブログのテーマからしてあまり受けないかなと思ってSNS日記や一部の人としかやりとりしていませんでしたが、当初よりFXはスイングからスタートしていましたし、このブログのタイトルにもずっと入れていますので、今後も、スイング、スワップ両方の記事を書いていくことにします。
さて、マーケットの性質が違ったということは、相関の変化は?・・・については、次回に続きます。
※文中の計算値は、拙作FX分析ツールより引用
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